接着剤を使わない「はめ込み式(クリックロック式)」なら賃貸でも完全無欠である――。このネット上で広く拡散されている言説も、建材力学の視点から見れば重大な誤解を含んでいます。
はめ込み式製品の致命的な盲点は、塩ビ素材の熱膨張と収縮です。夏場に直射日光が当たる南向きの窓際では、タイルが膨張して逃げ場を失い、床の中央部が山型に盛り上がる「突き上げ現象」が発生します。逆に冬場は素材が収縮し、カチッと噛み合っていたはずのジョイントが外れて数ミリ単位のはめ込み式フロアタイル隙間が部屋のいたるところに出現します。この隙間に日常のホコリやこぼした水分が入り込むと、掃除機でも掻き出せず、衛生面で深刻なストレスを生み出します。
さらに見落とされがちなのが、賃貸フロアタイル段差ドア干渉です。フロアタイルは薄型のものでも厚さ4mm〜5mm程度、防音パッド付きでは6mm以上に達します。居室のドアやクローゼットの折れ戸下部にあるクリアランス(隙間)は、近年の賃貸住宅では気密性確保のため5mm前後に設計されている物件が少なくありません。タイルを敷いた瞬間、ドアがタイルの端に激突して開閉不能になり、ドア下部を削るわけにもいかず施工自体を断念せざるを得ない事態が多発しています。
加えて、フロアタイル床暖房後悔の事例も後を絶ちません。「床暖房対応」を謳う製品であっても、それは「熱でタイル自体が融解・破損しない」ことを意味しているに過ぎず、熱伝導率の低下による暖房効率の劇的な悪化や、局所的な熱こもりによる下地合板のひび割れリスクまで保証しているわけではありません。電気代の高騰に頭を抱え、結局1シーズンで撤去したという居住者からの相談は毎年冬になると急増します。