蕎麦屋の品書きを見る際、多くの人が直面するのが「十割(じゅうわり・とわり)」と「二八(にはち)」の選択です。つなぎである小麦粉を一切使わず、そば粉100%で打つ十割そばは、噛み締めるほどに広がる強烈な穀物の芳香と、蕎麦本来の力強い風味が最大の持ち味と言えます。かつては切れやすくボソボソとした食感になりがちでしたが、製粉技術や手打ち技術が飛躍的に進化した現在では、見事なコシとしなやかさを両立させた極上の一枚が提供されています。
対する二八そばは、そば粉8割に対して小麦粉2割を配合する、江戸時代から受け継がれてきた伝統の黄金比率です。小麦粉に含まれるグルテンの働きによって、ツルリとした心地よい喉越しと適度な弾力が生まれ、濃いめの江戸前つゆとも抜群の相性を誇ります。どちらが優れているかという議論ではなく、純粋な香りと濃厚なそば湯を楽しみたいなら十割、喉越しの快感や出汁との一体感を味わうなら二八という選び方が通の基準です。