ナスキーマカレーの成否を分ける最大の分水嶺は、ナスの火入れと油のコントロールにあります。ナスは内部の約90%以上が水分であり、微細な空洞が無数に存在する「スポンジ状の細胞構造」を持っています。生のまま油の引かれたフライパンに投入すると、スポンジが液体を吸い上げるように油を吸収し、結果として重たく脂っこい仕上がりになってしまいます。
この問題を根本から解消し、外は香ばしく中は極上のトロトロ食感に仕上げるプロの裏技は主に2つあります。
技法1:事前のレンジ加熱による「細胞の事前収縮」
カットしたナスを耐熱ボウルに入れ、ごま油またはサラダ油小さじ1程度を全体に薄く絡めてから、ラップをかけて電子レンジ(600W)で約2分加熱します。あらかじめ熱で細胞内の空洞を収縮させておくことで、フライパンに入れた際に余分な油を吸い込む隙間をなくし、最小限の油で驚くほどジューシーに火が通ります。
技法2:塩振りによる水分排出
切ったナスに塩をひとつまみ振り、5分ほど置いた後に表面に浮き出た水分をペーパータオルで拭き取ります。浸透圧によってあらかじめ水分と余分なアクを抜いておくことで、油の吸収率を抑えつつ、加熱時の火の通りを劇的に早めることが可能です。
また、なすの切り方も仕上がりの印象を大きく左右します。ひき肉と一体感を持たせたい場合は「1cm角のさいの目切り(ダイスカット)」が適しており、スプーンですくった際の一体感が格段に向上します。一方で、ナスの存在感や瑞々しさを主役にしたい場合は「1.5cm幅の半月切り」や「乱切り」にすることで、噛んだ瞬間にジュワッと広がる果肉の旨味を堪能できます。