トロッコ列車を予約する際、旅行者が最も頭を悩ませるのが「左右どちらのボックス席を確保すべきか」という問題です。結論から言えば、トロッコ嵯峨駅から亀岡駅へ向かう「下り列車」に乗る場合は進行方向右側(偶数番号席)、逆にトロッコ亀岡駅から嵯峨方面へ戻る「上り列車」に乗る場合は進行方向左側が、保津川を眼下に望む時間が長く、絶景シートとしての軍配が上がります。
ただし、ここには地形上の決定的なトラップが存在します。保津川は蛇行しながら渓谷を縫うように流れているため、列車が鉄橋(保津川橋梁)を渡る中盤のポイントを境に、絶景の主役となる川の位置が反対側へと切り替わります。全行程約25分のうち、嵯峨発基準で言えば最初の約15分間は右側に息をのむような渓谷が広がるものの、終盤の約10分間は一転して左側が川沿いとなり、右側は山肌の岩壁に遮られます。つまり「ずっと右側だけが絶景」というわけではなく、車窓の見せ場が途中で劇的にスイッチする構造を理解しておくことが不可欠です。
そして、写真映えや圧倒的な臨場感を求める旅行者から圧倒的な支持を集めているのが、嵯峨野観光鉄道リッチ号5号車です。この5号車は通常の1〜4号車とは異なり、側面の窓ガラスが一切取り払われ、床板までもが金属の格子状(グレーチング)メッシュで構成されています。保津峡の冷涼な風がダイレクトに吹き抜け、足元を流れる川面を直に見下ろせるスリルと爽快感は唯一無二の体験と言えます。
ただし、現地取材や旅行者の体験談でも頻繁に指摘される通り、リッチ号には特有のトレードオフが存在します。吹きさらし構造のため、雨天時は車内に雨粒が吹き込みますが、安全基準上、走行中の傘の使用は禁止されており、レインコート等の雨具着用が義務付けられます。さらに秋口以降の肌寒い季節には体感温度が急激に低下するため、開放感の対価として防寒・雨天対策を万全にしておく覚悟が求められます。