2014年、大阪・心斎橋の路地裏からスタートしたgramは、分厚いパンケーキを3段重ねにした圧倒的なビジュアルで一躍時代の寵児となりました。しかし、2018年頃を境に閉店ラッシュが本格化し、わずか数年で国内の店舗網は急速に縮小しました。かつてメディアを席巻した名店がなぜこれほどの苦境に立たされたのか、その理由は単一の要因ではなく、複数の経営課題が重なり合った構造的なものでした。
最大の要因と指摘されているのが、gramカフェフランチャイズの急拡大に伴うオペレーション崩壊です。看板メニューであるgramプレミアムパンケーキは、メレンゲの泡立て具合や焼き加減、温度管理に職人技とも言える極めて繊細な技術を要します。「各回20食限定」という縛りは、単なるマーケティング上の演出ではなく、調理機器のキャパシティと高度な技術を担保するための防衛策でもありました。
しかし、短期間で全国へFC展開を加速させた結果、アルバイト主体の厨房現場では品質維持が困難を極めました。当時の現場を知る元従業員は「店舗によって膨らみ方が全く異なり、生焼けに近い状態や冷めきった状態で提供してしまうケースが頻発していた」と証言します。写真映えを期待して来店した顧客が、期待外れのクオリティに落胆し、リピーターとして定着しなかったことが客数減少の引き金となりました。
さらに追い討ちをかけたのが、競合他社との苛烈なシェア争いと「映えブーム」の消費サイクルの短さです。「幸せのパンケーキ」や「FLIPPER'S」といった同ジャンルのライバルが均一なクオリティと洗練された世界観でシェアを奪う中、消費者の関心はタピオカや高級食パン、夜パフェといった次なるトレンドへと瞬く間に移行していきました。高額なFC加盟料やロイヤリティを支払っていた地方のオーナー店から採算割れに陥り、耐えきれなくなった店舗から次々と撤退を選択せざるを得なくなったのが、大量閉店の決定的な引き金です。