歴代最悪の暴君として名高い第10代王・燕山君(ヨンサングン)の治世下で宮廷を支配したのが、張緑水(チャン・ノクス)です。彼女は元々、貴族の家で召し使われていた奴婢(ヌヒ)であり、結婚して子どももいた身分でした。しかし、卓越した歌舞の才能と、燕山君の母性飢餓を巧みに刺激する人心掌握術で王の心を鷲掴みにします。
実録の記述によれば、張緑水は決して飛び抜けた絶世の美女ではなかったものの、「30代になっても16歳の少女のような若々しさを保ち、人を魅了する術に長けていた」とされています。母を失ったトラウマから精神の均衡を崩していた燕山君を幼児のようにあやし、意のままに操りました。
権力を手に入れた張緑水は、親族を要職に就けて国財を私物化し、自らを批判する官僚を容赦なく死刑に処すなど、暴政の限りを尽くしました。しかし、民衆の怒りが頂点に達した1506年、クーデター(中宗反正)が勃発。燕山君は廃位され、張緑水は即座に捕縛されて市場で公開斬首されました。遺体には無数の民衆から石が投げつけられ、あっという間に石の山ができたという凄惨な結末が記録されています。