2017年秋に発生した日馬富士による傷害事件は、単なる力士同士のトラブルにとどまらず、相撲界全体の権力闘争や組織改革を巡る対立へと発展しました。秋巡業中の鳥取市内で開かれたモンゴル出身力士らの懇親会において、貴ノ岩の態度をとがめた日馬富士が手を上げたことが発端とされています。
当時、日本相撲協会への報告を後回しにして警察へ被害届を提出した貴乃花親方の行動は、連日ワイドショーで大きく報道されました。貴乃花親方は「我が子同然の弟子を守るため」という強い信念を持って協会執行部と対峙。一方、協会の危機管理委員会や他の一門との溝は決定的なものとなり、角界の分断を招く結果となりました。
当時の特番インタビューや関係者の手記によると、貴ノ岩本人は激しい頭痛や後遺症に苦しみながらも、「師匠と弟子の強い絆」を信じて沈黙を守り続けていました。しかし、この事件をきっかけに師弟は相撲界全体から孤立する形となり、精神的な重圧は計り知れないレベルに達していました。