個人のアイデンティティへの関心が高まるなか、自らのルーツを探し出そうとする動きがかつてない盛り上がりを見せている。法務省民事局が管理する公的な戸籍制度は、明治以降の家族の足跡を厳密に辿る基盤となってきた。しかし除籍謄本の保存年限やプライバシー保護の壁が立ちはだかるなか、専門的な知見で血統を遡る「戸籍調査産業」が注目を集めている。
日本家系図学会の専門家らも指摘するように、珍しい名字の調査は単なる親族探しにとどまらない。過去の公文書や寺院の過去帳、古地図を照合する地道な作業は、公的な記録の網から零れ落ちかけた名もなき市井の人々の生を掘り起こす作業でもある。「け」から始まる稀少姓の持ち主たちが先祖を辿るとき、そこには地方豪族の盛衰や、歴史の教科書には載らない民衆のドラマが立ち現れる。