自ら望んで子なしを選んだわけではなく、長期にわたる不妊治療の末に子どもを持たない決断を下したカップルも多く存在します。保険適用が拡大されたとはいえ、心身への負担と毎月の落胆は計り知れず、治療を断念した直後は強い喪失感(グリーフ)に襲われるケースが珍しくありません。
不妊治療を諦めた後の夫婦生活において最も重要なのは、互いの悲しみを否定せず共有することです。「子どもを迎えるための共同体」から「再び2人で歩むパートナー」へと関係性を再構築するには時間が必要です。この段階で対話が途絶え、お互いを責め合ってしまうと、夫婦の溝は深まってしまいます。
一般的に、子なし夫婦の離婚率が高くなりやすいと言われる理由の一つに、この「不妊治療の挫折による精神的疲弊」やすれ違いが挙げられます。逆に言えば、大きな喪失体験を2人で支え合い、カウンセリングの活用や新しい共通の目標を見出すことで、以前よりも強固な絆を結び直す夫婦も数多く存在します。