戦国時代(日本史)における屈指の英傑・上杉謙信。彼に纏わる最も有名で魅力的な都市伝説が「馬に乗ったまま酒を飲んでいた」というものだ。だが、現地の地形や当時の馬具を考慮すると、走る馬の上でなみなみと注がれた酒を味わうのは物理的に極めて困難と言わざるを得ない。
では、なぜ「馬上杯」と呼ばれるのか。最大の理由はその独特な形状にある。杯の下部に高く頑丈な台座(高台)がついており、手袋や籠手を装着したままでも指先でしっかりと挟み込むことができる。合戦の合間に馬上から手を伸ばして受け取る、あるいは本陣のパイプ椅子に相当する床床(しょうぎ)に座ったまま手軽に杯を交わすために設計された携帯酒器だったのだ。