暴君として名高い燕山君の寵愛を一身に受けたのが張緑水(チャン・ノクス)だ。奴婢という極めて低い身分に生まれながら、その類まれな歌舞の才能で王の心を掴み、宮廷の頂点へと上り詰めた。彼女の存在は、抑圧された階級社会に対する挑戦でもあった。
張緑水は単なる愛妾にとどまらず、王の情緒をコントロールする唯一無二の存在となった。しかし、王の奇行と粛清政治が加速するにつれ、民衆や臣下の不満はすべて彼女へと向けられる。クーデターによって燕山君が失脚すると、彼女もまた悲惨な最期を遂げた。権力に寄り添うことでしか生きられなかった女の脆さと凄味が、その生涯には凝縮されている。