物語の中心人物である範馬刃牙という存在もまた、周囲の証言によってその凄みが立体的に浮かび上がる。彼自身の独白よりも、彼に敗れ去ったライバルや、その破壊的な強さを至近距離で目撃した第三者の口から語られる言葉の方が、はるかに視聴者の心を揺さぶるからだ。
「あの一撃は目で見える代物ではなかった」「人間業とは思えない」――こうした率直な吐露が重なることで、範馬刃牙という格闘家の神話性が膨らんでいく。語り手の吐息や間合い、カメラから視線を外す一瞬の動揺まで丁寧に描写されることで、視聴者はいつの間にか架空の人物を実在の英雄として認識し始めてしまう。