物語中盤、軍の巨大飛行戦艦ゴリアテから逃れ、竜の巣の縁に追い詰められたタイガーモス号の見張り台(凧)で、パズーは驚くべき行動に出ます。逃げようとするドーラに対し、パズーは叫びます。
「お父さんは竜の巣の中でラピュタを見たんだ!」「逆風だ、足手まといの凧を切り離してくれ!」
なぜ「風に逆らって飛ぶ」ことが竜の巣に入る唯一の方法だったのでしょうか。これには2つの明確な理由が存在します。
1. 気象力学:猛烈な低気圧中心への吸い込み気流
巨大な低気圧や竜巻の外縁部では、中心の超低気圧部に向かって四方八方から空気が猛烈な勢いで吸い込まれます。竜の巣の外側を航行している飛行船から見れば、巣の内部から外側へ風が吹き出しているように感じる場面があっても、中心部に突入するためには「渦を巻く強烈な向かい風(逆風)のベクトルを正面から突き破る」必要があります。風に流されて順風で逃げようとすれば、外周の激しい乱気流に巻き込まれて機体は空中分解してしまいます。
2. 亡き父の残した「航路データ」と飛行石の導き
かつてパズーの父は小型飛行艇で竜の巣に突入し、ラピュタの一部を写真に収めて奇跡的に生還しました。しかし世間からは「嘘つき」と罵られ、失意のうちに亡くなっています。パズーは父が遺した手記や証言から、「竜の巣を迂回するのではなく、正面の逆風に飛び込むことこそが中心への最短ルートである」という確信を直感的に掴んでいました。
さらに、シータが首に下げていた飛行石が青く輝き、中心のラピュタ本体と同調したことで、凧のワイヤーが切断された後もふたりは雷雲のバリアを無傷で突破することができたのです。