独裁者が生んだ孤児院の悲劇・歴史の闇に葬られた命の真実と叫び

独裁者が生んだ孤児院の悲劇・歴史の闇に葬られた命の真実と叫び

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ルーマニアの悲劇の引き金を引いたのは、1966年に制定された悪名高き「政令770号」だった。独裁者ニコラエ・チャウシェスクは、労働力と軍事力を急速に拡大させて大国化を図るため、人口を2000万人から3000万人へ増やすという無謀な国家目標を打ち立てた。避妊具の製造・輸入は全面禁止、人工妊娠中絶は国家に対する重罪として厳罰化された。

この人口爆発計画を推進する黒幕となったのが、ニコラエの妻エレナ・チャウシェスクである。ルーマニア共産党の絶対的指導部として君臨した夫妻は、女性の生殖能力を「公的資源」と位置づけた。職場には婦人科医と秘密警察セクリターテが送り込まれ、成人女性に対する月経検査が強制的に実施された。妊娠を故意に回避していないかを監視するこの恐るべき仕組みは、市民から「月経警察」と恐れられた。

国家による強要は、過酷な現実を生んだ。貧困にあえぐ一般家庭は多子化の負担に耐えられず、闇医者による危険な違法中絶が蔓延した。敗血症や失血により命を落とした女性は数万人に上ると推定される。そして、無事に産み落とされたとしても、経済的に育てる術を持たない親たちは、生まれたばかりの赤ん坊を国家の施設へ預けるしかなかった。「国家が子供を育てる」という共産党の甘言は、底なしの悪夢への入り口に過ぎなかった。

木村 陽翔
著者

木村 陽翔

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。