なぜ粉末の上白糖やグラニュー糖ではなく、大粒の氷砂糖を使う必要があるのか。その答えは醸造学の浸透圧理論にある。
糖分がいきなり高濃度で液体に溶け出すと、浸透圧の急激な差によって果皮の細胞が一気に破壊される。結果として果肉が崩れ、酒の中に微細な浮遊物が充満して白濁を招いてしまう。ゆっくりと溶ける氷砂糖を用いることで、アルコールと糖分が徐々に果実の細胞膜を行き来し、透明度を保ちながらエキス分だけを美しく抽出できるのだ。
国内の果実酒文化を牽引してきたチョーヤ梅酒株式会社の研究データなどでも示されている通り、果実酒の澄んだ色調と長期保存性は、アルコール度数と糖分の溶解スピードのコントロールに直結している。35度のホワイトリカーは殺菌力を保ちつつ、果実の水分によって薄まっても20度以上の安全域をキープするための必須防壁となる。直射日光を避け、温度変化の少ない15〜20度の冷暗所で静かに寝かせることが、濁りを寄せ付けない唯一無二の環境作りだ。