国際映画祭でも高い評価を得てきた是枝裕和監督だが、本作では自身の原点である濃厚なヒューマンドラマの要素を極限まで研ぎ澄ませている。一見すると陰謀渦巻くサスペンスでありながら、その根底にあるのは血の繋がりや絆、そして歪んだ愛の形だ。
監督は「人は他者の痛みをどこまで自分事として受け止められるのか」という普遍的なテーマを画面に焼き付けた。登場人物たちが抱える過去の傷や一筋縄ではいかない人間関係が、丹念なセリフと静寂の間(ま)によって描かれていく。単なる謎解きにとどまらない、観る者の心に深く刺さる問いかけがそこにはある。