こうした一連のドラスティックな変化の契機となったのは、2020年に全面施行された改正健康増進法だ。望まない受動喫煙を防止するための法的枠組みが強化され、多くの人が利用する交通機関での受動喫煙防止策は一段と厳しい基準が求められるようになった。鉄道旅客運送事業を担う各社は、乗客の安全と快適性を両立させるための決断を迫られていた。
東海旅客鉄道株式会社(JR東海)、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)、九州旅客鉄道株式会社(JR九州)の3社は、時代の要請に応える形で段階的な禁煙化を推進。JR東海代表取締役社長の丹羽俊介氏は、顧客満足度の向上と安全対策の強化を掲げ、車内環境の抜本的な見直しを指揮してきた。喫煙率の低下や健康志向の高まりという不可逆なトレンドの中で、鉄道事業者は単なる煙害対策にとどまらず、空間利用の最適化へと舵を切ったのである。