宝塚の美を語る上で絶対に外せないのが、伝統の舞台メイクだ。『ベルサイユのばら』のオスカルやフェルゼン、『エリザベート -愛と死の輪舞』のトート閣下など、ミュージカル・歌劇の歴史に刻まれる名作において、役柄を生命体として完成させるのがこのメイク技術である。
宝塚の舞台メイクは、一般的な日常メイクやテレビ用のメイクとは根本的に異なる。鼻筋を高く見せるノーズシャドウの入れ方、目のサイズを2倍以上に見せるダブルラインの技術、顔の陰影を自在にコントロールするハイライトとシェーディング。これらは、劇場の客席の一番後ろまで表情を届けるために考案された視覚の魔術だ。すっぴんと舞台姿のギャップがあまりにも大きいため、メイク後の写真だけを見た人が「整形だ」と勘違いしてしまうのも当然と言えるだろう。