こきりこ節が「日本最古の民謡」と称される背景には、飛鳥・奈良時代から平安時代にかけて成立した農耕儀礼「田楽(でんがく)」の直系であるという歴史的裏付けがあります。
五箇山(平村・上平村・利賀村一帯)は、庄川沿いの急峻な谷間に位置し、冬期は数メートルもの豪雪に閉ざされる隔絶された地でした。この厳しい地理条件が、外部からの急激な文化的変容を防ぎ、古代から中世の芸能形態をほぼ原型のままタイムカプセルのように保存することにつながりました。
地元保存会の記録および民俗調査資料によると、大化の改新(645年)の時代に田植えの労をねぎらい豊作を祈願した「田遊び」が発祥とされ、越中五箇山の上梨白山宮の秋季祭礼(毎年9月25日・26日開催)において神事として奉納され続けてきました。源平合戦に敗れた平家の落人が隠れ住み、往時の都を偲んで歌い継いだという伝承も色濃く残っており、哀切を帯びたメロディラインには武士たちの無念と郷愁が投影されていると語り継がれています。