茹で上がった卵を半分に切ったとき、黄身の外側が灰色や暗い緑色に変色していてギョッとした経験はないでしょうか。「腐敗しているのでは?」と不安になる方も多いですが、この変色の正体は「硫化鉄(りゅうかてつ)」と呼ばれる無害な化学物質です。
卵白には硫黄を含むアミノ酸が含まれており、加熱時間が長引いて黄身の温度が約70度を超えると分解されて硫化水素ガスが発生します。このガスが黄身の方向へと拡散し、卵黄に含まれる鉄分と化学反応を起こすことで、接触面である黄身の表面に黒緑色の硫化鉄が生成されるのです。人体に害はありませんが、風味はやや硫黄臭くなり、舌触りもパサパサと悪化してしまいます。
この黒ずみを完全に防ぎ、鮮やかなレモンイエローの黄身に仕上げるための決定打が「茹で上がり直後の急速冷却」です。冷水(できれば氷水)に卵を素早くドボンと浸すことで、卵内部の圧力が急低下します。すると硫化水素ガスが卵黄に向かわず、殻の外側へと引っ張られて放出されるため、化学反応がピタリと止まります。加熱時間を13分以内に留め、即座に冷やすことが美しい完熟卵を作る最大のポイントです。