数ある讃岐うどんの名店おすすめリストにおいて、常にトップクラスの言及数を誇るのが「手打十段うどんバカ一代」です。平日・週末を問わず店先に伸びる長い行列は、高松市多賀町の日常風景ともなっています。観光関係者や地元常連客への取材から浮かび上がってきたのは、単なるメディア露出にとどまらない、強烈なリピート構造でした。
その核にあるのが、来店者の大半が注文する手打十段うどんバカ一代の釜バターうどんです。茹で上がったばかりの熱々の麺を水で締めずに直接丼へ引き上げる「釜抜き麺」に、角切りバターと粗挽き黒胡椒が鎮座し、別添えの生卵を自分で割り落として特製出汁醤油を回し入れるスタイルです。一見すると「和風カルボナーラ」と形容されがちですが、実際に口へ運ぶとその印象は根本から覆ります。
丼の中で立ち上る小麦の甘い湯気と、溶け出したバターのまろやかなコク、そこに生卵が絡みつくことで、極めて重厚な旨味のヴェールが形成されます。全体を引き締めるのは、ピリッと刺激的な黒胡椒と、芳醇ないりこ出汁が香る専用醤油です。現場での観察取材によれば、一般的なカルボナーラパスタのような重たさはなく、うどん特有の滑らかな喉越しと力強い弾力が最後まで持続します。麺自体に小麦本来の生命力が宿っているからこそ、濃厚な具材に負けずに調和するという職人技の妙が、この絶品な評判を支えています。
店内の壁面を埋め尽くす数百枚もの芸能人・著名人のサイン色紙は、単なる人気の誇示ではなく、長年にわたりブレずに品質を保ち続けてきた証拠といえます。一度食べた人が「香川に来たらこれを食べなければ始まらない」と確信し、口コミが新たな旅行者を呼び込む好循環が、途切れない行列を生み出している最大の要因です。