ホテルの起源を遡ると、明治時代に筑豊の炭鉱経営で財を成した実業家・安川敬一郎ゆかりの別荘地に行き着きます。敷地内に造営された約700坪の池泉回遊式庭園は、百有余年の歳月をかけて樹木が育ち、小倉の市街地中心部にありながら静寂を保つ奇跡のような空間として守り継がれてきました。
昭和から平成にかけて、ホテルニュータガワの歴史は「小倉屈指のハイクラスホテル」として市民の誇りであり続けました。特にアートホテル小倉ニュータガワの結婚式場としてのステータスは圧倒的で、「親子二代にわたってここで式を挙げた」という家庭も少なくありません。庭園を背景にした和装の前撮りや、優雅なチャペルウェディングは北九州を代表する憧れの象徴でした。
また、食の分野でも高い評価を確立していました。中でも中庭の景観を望みながら本格的な和洋折衷料理や鉄板焼を楽しめた「アートホテル小倉ニュータガワ レストラン 雫(SHIZUKU)」は、結納や顔合わせ、記念日のディナー、地元企業の接待利用で予約が殺到する名店として知られていました。
転機が訪れたのは2010年代後半のことです。旧ホテルニュータガワの運営会社から事業を承継したのが、国内外で多様な宿泊施設を展開する大手オペレーター「マイステイズ・ホテル・マネジメント」でした。「アートホテル」ブランドを冠してリブランドを図り、インバウンド誘致やモダンな客室リニューアルを推進したものの、歴史ある庭園ホテルの重厚な維持コストと市場変化のスピードが交錯することとなりました。