四季折々の表情で訪れる人々を癒やしてきた等々力渓谷公園が一変したのは、2023年7月のことでした。谷沢川沿いの散策路脇において、樹高十数メートルに及ぶ大木が突如として倒伏する事案が発生。幸いにも歩行者への直撃という最悪の事態は免れたものの、渓谷特有の急峻な斜面環境がはらむ構造的リスクが浮き彫りとなりました。
世田谷区が専門家を交えて実施した緊急樹木健全度調査では、樹木の老朽化に加え、近年の集中豪雨による地盤の緩み、さらには全国的な猛威を振るう「ナラ枯れ」被害の影響が確認されました。谷底を歩く歩行者の頭上には、いつ倒れてもおかしくない枯死木や大枝が複数潜在していることが判明したのです。区は来園者の生命を守るため、等々力渓谷の立ち入り禁止措置へ踏み切らざるを得ませんでした。
地元メディアや世田谷区の等々力渓谷ニュースでも繰り返し報じられている通り、単なる1本の倒木処理にとどまらず、延長約1キロメートルに及ぶ渓谷両岸の斜面全体を再点検・補強しなければならない点が、事態を長期化させている最大の要因です。2026年現在も、赤い欄干が印象的な等々力渓谷のゴルフ橋下から不動の滝へと続く主要な谷底ルートは、厳重なバリケードで封鎖されています。