生涯を通じて日本全国を旅し、各地の風土や仏教思想、自然の息吹に触れ続けた井泉水。この句が生まれた背景にも、彼が実際に旅路の途中で目撃した日本の原風景が存在します。
日本は周囲を海に囲まれ、沿岸部まで山肌が迫る地形が数多く存在します。三浦半島や伊豆半島、あるいは瀬戸内海や日本海沿岸など、春になると紺碧の海と咲き乱れる桜が同時に視界へ飛び込んでくる景勝地は少なくありません。
春光に照らされて輝く海面と、役目を終えて水面に散り敷く無数の花びら。井泉水はその一瞬の出逢いに深く心打たれ、余計な修辞をすべて削ぎ落とし、「桜」「海」「青」「散る」という本質的な言葉だけでスケッチしました。自然に対する深い敬意と感性が凝縮された瞬間だったと言えます。