「話題の傑作『スモール・アックス』が描く衝撃の真相とは何なのか」「なぜ世界中の映画ファンや評論家が手放しで絶賛するのか」――この問いに対する答えは、本作が単なる娯楽映画の域を遥かに越え、歴史の闇に葬られかけた「制度的人種差別の構造と人間の誇り」を容赦ない解像度で白日の下に晒した点にあります。
タイトルの原点は、伝説的レゲエミュージシャンであるボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの名曲『Small Axe』の一節、「お前たちが大きな木なら、俺たちは小さな斧だ。切り倒してやる(If you are the big tree, We are the small axe)」に由来しています。強大な国家権力や差別的な司法制度という「大木」に対し、市井の市民たちが「小さな斧」となって立ち向かう姿勢そのものを象徴したタイトルです。
メガホンを取ったスティーヴ・マックィーン監督は、映画『それでも夜は明ける』で黒人監督として史上初めて米アカデミー賞作品賞に輝いた現代屈指の巨匠。監督自身がロンドンの西インド諸島系移民2世として育った背景を持ち、長年温め続けてきたライフワークが本作です。海外特派員のインタビュー取材において、監督は「これは私の個人的な情熱であり、父や母、そしてコミュニティの仲間たちが実際に生きてきた血と汗の歴史そのものだ。語られなければ、彼らの存在そのものが消去されてしまう」と語っています。この圧倒的な当事者意識と切実な使命感が、画面の隅々にまで凄まじい緊張感と熱量をもたらしています。