この施設を深く理解する上で避けて通れないのが、「札幌市自然史博物館構想」という長年の課題と、移転の歴史的背景です。
人口約197万人を数える政令指定都市でありながら、札幌市には大阪市立自然史博物館や国立科学博物館のような「独立した総合自然史博物館」がいまだ存在しません。かつて大通西13丁目の札幌市資料館内にあった自然史博物館室を出発点とし、その後、南区真駒内幸町の旧小学校施設等を活用した活動を経て、2014年(平成26年)に現在の豊平区平岸の地へ移転・リニューアルオープンを果たしました。
現在の施設は、一般公開されている展示スペースの奥に、広大な収蔵庫と研究室を備えています。市内各地で発見される動植物標本、昆虫、岩石・化石を日々収集・保管・修復し、データベース化する「都市の標本アーカイブ拠点」として機能しているのが実態です。札幌市自然史博物館の建設要望は長年市民団体や学術機関から寄せられており、センターは将来的な本格博物館設立に向けた「種火を守り、標本を蓄積し続けるプレ博物館」としての使命を帯びています。小規模ながら展示の密度が極めて濃いのは、研究者たちの執念と市民の支援がこの空間に凝縮されているからです。