アイアンマンが初めて世界に姿を現したのは、1963年3月刊行のコミック『テイルズ・オブ・サスペンス39号(Tales of Suspense #39)』でした。原作者のスタン・リー、脚本のラリー・リーバー、作画のドン・ヘック、そしてキャラクターデザインを担当したジャック・カービーというマーベル黄金期のレジェンドたちによって生み出されました。
当時のアメリカは冷戦の真っ只中にあり、若者の間では反戦運動や反体制カルチャーが高まりを見せていました。スタン・リーは後年の回想録や特番インタビューの中で、「当時の読者が最も毛嫌いしていた『戦争で儲ける巨大軍需産業の資本主義者』をあえて主人公に据え、読者に愛させてみせるという賭けに出た」と述懐しています。
トニー・スターク初期設定と誕生秘話における最大の特徴は、拉致された現場がベトナムのジャングルだった点です。現地で新兵器の実験中にブービートラップにかかり、心臓の近くに破片が突き刺さる重傷を負ったトニーは、敵軍の捕虜となります。同じく捕らわれていた物理学者ホー・インセン教授の協力を得て、生命維持装置を兼ねた外骨格アーマー「初代マーク1」を廃材から急造し、脱出を果たしました。
初登場時の初代マーク1は、塗装も施されていない灰色の鉄板剥き出しのビジュアルでした。しかし、印刷の都合で全体が暗く沈んで見えたことや、一般市民からヴィラン(悪役)と勘違いされるという作中の理由から、翌月の第40号では早くも全身を金色に塗り替えた「ゴールデン・アベンジャー」へとマイナーチェンジを遂げます。