車内仮眠において多くの人が陥りがちな誤解が、「電車の中でもベッドのように深くぐっすり眠るべきだ」という思い込みです。睡眠医学および作業効率化の観点から見ると、移動中の完全な熟睡はかえって日中のパフォーマンスを低下させる要因になります。
成人の睡眠周期において、入眠から約30分以上が経過すると脳は「深睡眠(徐波睡眠)」の状態へ移行します。この段階で無理やり目を覚ますと、「睡眠慣性(スリープ・イナーシャ)」と呼ばれる強い倦怠感や頭痛、判断力の低下が最大2時間程度持続します。目的地に到着した直後から仕事や作業に取り掛かるビジネスパーソンにとって、電車内での熟睡は逆効果です。
目指すべきは、脳の疲労物質をクリアにする15分から20分程度の浅い仮眠(パワーナップ)です。使い捨てのホットアイマスク(めぐりズム等)の発熱持続時間が約20分に設計されているのはこの生理現象に合致しており、温度が徐々に下がるタイミングが覚醒のシグナルとして機能します。アイマスクは「完全に寝落ちするため」ではなく、「目に入る光刺激をカットして脳を休止モードに導くツール」として割り切るのが、正しい活用法です。