ラー油と蕎麦という前代未聞の組み合わせが生まれたのは、2002年に東京・虎ノ門で創業した「そば処 港屋」でした。考案者である店主の菊地剛志氏は、ジャズが静かに流れる黒を基調としたシックな立ち食い空間に大きな一枚岩のカウンターを据え、従来の蕎麦屋のイメージを完全に打ち破りました。
同店の看板メニューとなった「冷たい肉そば」は、丼から溢れんばかりの刻み海苔と白ごま、甘辛く煮た豚バラ肉、そして噛み切るのに力が必要なほどの超極太麺を、ラー油が真っ赤に浮かぶ特製つゆにつけて食べるスタイル。オープン直後からオフィス街のビジネスパーソンを中心に熱狂的な支持を集め、連日大行列を作る伝説の店となりました。
虎ノ門の旧本店は2019年に惜しまれつつ幕を閉じましたが、その唯一無二のコンセプトと味わいは「港屋インスパイア」として瞬く間に全国へ波及。現在では「なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。」をはじめとする専門チェーン店や個人店へとDNAが受け継がれています。