ヴェルトポリティーク(Weltpolitik)は、直訳すれば「世界政策」を意味するドイツ語です。世界史の文脈においては、1890年に宰相ビスマルクを解任した皇帝ヴィルヘルム2世が主導した、対外膨張的・帝国主義的な外交および植民地政策を指します。
それ以前のドイツ外交を支配していたのは「レアルポリティーク(現実政治)」でした。1871年に普仏戦争を経てドイツ統一を成し遂げたビスマルクは、「これ以上の領土拡張は行わない」と宣言し、欧州大陸における現状維持に徹しました。復讐を企てるフランスを孤立させ、ロシアやオーストリアと緊密な同盟・協定を結ぶことで、ドイツが二正面作戦(東西両面での戦争)に陥る事態を徹底的に回避していたのです。
しかし、重化学工業の発展によってイギリスを凌ぐ工業力を手に入れた19世紀末のドイツ帝国にとって、既存の欧州秩序は「あまりに狭すぎる檻」に見え始めていました。ヴィルヘルム2世は、英国のような広大な海洋帝国になることを夢想し、アフリカ分割やアジア・太平洋への進出に乗り出します。これが、ビスマルク体制の解体とヴェルトポリティークの幕開けでした。