ネジが固く締まって動かない、あるいは回そうとしてもドライバーが空回りする背景には、明確な物理的・化学的要因が存在します。ネジが固着する原因と理由を正しく把握することは、適切な対処法を選択する第一歩です。
第一の要因は金属同士の酸化・電食(サビ)です。屋外のフェンスや浴室回り、長年放置された機械類では、空気中の水分や塩分によってネジ山と母材のネジ穴の間で酸化鉄などのサビが発生します。サビは体積が元の金属の数倍に膨張するため、ネジの隙間を埋め尽くして強固に噛み合い、事実上の溶接に近いロック状態を作り出します。また、アルミと鉄のように異なる金属が接触している部位では「異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)」が起き、電気化学的な結合によって激しく固着します。
第二の要因は締め付けトルク過過多と熱膨張です。前回の組み立て時にインパクトドライバーなどで過剰な力(オーバートルク)をかけて締め付けた場合、ネジの軸が引き伸ばされて強力な軸張力が発生し、座面とネジ山が強く圧着されます。さらに、エンジン回りやマフラー、家電のヒーター周辺では、熱膨張と冷却のサイクルが繰り返されることで金属が焼き付き、ビクともしなくなります。
そして第三の要因が、作業者の操作ミスによるカムアウト現象です。プラスドライバーでネジを回す際、ドライバー先端がネジ溝から浮き上がって外れようとする上向きの分力が発生します。これを「カムアウト」と呼びます。ドライバーを「押す力」が不足したまま強い回転力をかけると、ドライバーの先端がネジ溝の角を削り取ってしまい、いわゆるなめたネジが完成してしまいます。一度溝が崩れると回転トルクが一切伝わらなくなり、手詰まりに陥るのです。