浅草のシンボルとして名高い神谷バーの歴史は、創業者・神谷伝兵衛が1880年に開いた濁酒の一杯売り店「みかはや銘酒店」から始まりました。その後、1912年(大正元年)に現在の「神谷バー」へと屋号を改め、日本で最初のバーとして西洋の酒場文化を日本の庶民に向けて開放しました。現在の鉄筋コンクリート造本館(1921年竣工)は、関東大震災や東京大空襲を耐え抜いた歴史的建造物であり、国の登録有形文化財に指定されています。
そして、神谷バーを語る上で欠かせないのが、誕生から130年以上愛され続ける看板カクテル浅草神谷バー電気ブランです。明治15年(1882年)の発売当時、電気がまだ極めて珍しく「最新・ハイカラなもの」の代名詞だったことから、舌をピリリと刺激する未知の洋酒に「電気ブラン」と名付けられました。太宰治の小説『人間失格』や萩原朔太郎の詩など、数多くの近代文学作品にもその名が刻まれています。
現在提供されている電気ブランには2種類のバリエーションがあり、アルコール度数と風味が明確に差別化されています。
- 電気ブラン(レギュラー):アルコール度数30度
現在スタンダードとして親しまれている一杯。ブランデーをベースに、ジン、ワイン、キュラソー、薬草系のリキュールなどが絶妙な比率でブレンドされており、琥珀色の液面から漂う華やかな香りと、どこか懐かしい甘みが特徴です。 - 電気ブラン〈オールド〉:アルコール度数40度
かつての発売初期(当時の度数は約45度)に近い力強いパンチを再現した上位版。度数が高い分、ハーブの香気立ちが鮮烈で、重厚なキレを味わいたい愛飲家に支持されています。
なお、ブレンドの詳細な配合比率は現在も「神谷家の秘伝」として一切公開されておらず、そのミステリアスな調合こそが、時代を超えて人々を惹きつける大きな要因となっています。