金鳥CM歴代名作まとめを紐解くと、日本の夏の情緒を決定づけた伝統期から、破壊的なコメディ路線への大転換、そして現代のハイブリッド型へと続く明確な進化の歴史が見えてきます。
ブランドの精神的支柱である金鳥の夏日本の夏というフレーズは、創業者の美意識と日本の伝統美を象徴するスローガンとして長年大切にされてきました。蚊取り線香の煙が立ち上る縁側、風鈴の音、浴衣姿の情景など、情緒的な映像美でブランド価値を確立した時期を経て、1980年代から1990年代にかけて大日本除虫菊は大胆なコペルニクス的転回を図ります。
その象徴が「タンスにゴン」であり、「亭主元気で留守がいい」というコピーは新語・流行語大賞を受賞する社会現象となりました。主婦層の潜在的な本音をユーモアで肯定し、防虫剤という地味な日用品を一躍エンターテインメントの主役に押し上げた功績は計り知れません。大滝秀治の「つまらん!」の一喝や、岸部一徳の飄々とした佇まいなど、日本を代表する名優たちの人間味を極限まで引き出す演出スタイルはこの時期に確立されました。
近年の大ヒット商品であるゴキブリムエンダーCMでは、これまでの会話劇で培った不条理演出が最新の機能訴求と完璧に噛み合っています。部屋全体に薬剤を行き渡らせる燻煙剤の煩わしさ(火災報知器へのカバーや食器の片付け)を、登場人物たちが独特の乾いたテンポで解消していく展開は、観る者を笑わせながら「自分も今すぐ試してみたい」と思わせる強力な購買喚起力を誇っています。