物語のクライマックスにおいて、読者および観客を最も震撼させたのが、天真爛漫にルイを愛し続けたアマの無残な変死劇です。渋谷の裏路地で暴力団関係者の男とトラブルになり、相手の鼻を噛みちぎったアマは、その報復として裏社会の追っ手によって拷問死させられたかのように描かれます。しかし、事件の真相を丹念に紐解くと、そこにはシバが仕掛けた冷酷極まりない罠と嗜虐心が横たわっていました。
アマの遺体は、すべての爪を剥がされ、背骨を折られるなど常軌を逸した暴行を受けた状態で発見されます。警察の捜査線上に浮かんだのは暴力団関係者でしたが、ルイの前に現れたシバの言動と所持品が、真の黒幕を指し示します。シバが所持していたアマの形見であるジッポライター、そしてシバ自身の口から漏れ出る「死ぬ間際の泣き叫ぶ声」の生々しい描写によって、シバがアマを拉致・拷問し、命を奪った真犯人であることがルイに確信されます。
シバがアマを手にかけてルイの身近に居座り続けた動機は、単なる衝動殺人ではありません。シバは極度のサディストであり、アマの肉体を破壊し尽くす快楽と同時に、アマという絶対的な拠り所を失って精神的に崩壊していくルイを観察し、自らの支配下に置くことに歪んだ至福を見出していました。真相を知ったルイは、警察へ駆け込むこともシバを刺すこともせず、シバの暴力と快楽を受け入れながら、空虚な日常を生きていく道を選択します。痛覚と喪失によってしか自己の輪郭を保てないルイの宿命が、救いのない余韻となって胸に突き刺さります。