「おいたわしや」という表現を漢字で表記すると「お痛わしや」となります。その語源は、平安時代から用いられてきた古語の形容詞「いたはし(労し・痛わし)」に遡ります。
「いたはし」は本来、自分の身を切られるように心が痛む状態や、相手を気遣って労わる心情を表す言葉でした。ここに丁寧・尊敬の接頭辞「お(御)」と、感情の高ぶりを込めた詠嘆の終助詞「や」が結びつくことで、「あまりにも気の毒で、見ているこちらの胸が激しく痛む」「なんと痛々しく憐れなことか」という深い悲哀と敬意を含んだ表現として成立しました。
歴史劇や歌舞伎、時代小説などでは、高貴な主君や皇族、敬愛する師などが非業の運命に倒れた際、家臣や近侍が嘆き悲しむ場面で使われるのが通例です。相手を下に見て小馬鹿にする「哀れみ」ではなく、相手への深い敬意を保ちながらも、その境遇の悲惨さに胸を締め付けられている状態を指すのが、本来の正しい日本語のニュアンスです。