私たちが親しんでいるあらすじと、歴史的な原典には決定的な乖離が存在します。『3匹の子豚』のテキストとして最も標準的な原典とされているのは、イギリスの民俗学者ジョセフ・ジェイコブスが1890年に編纂・出版した『イギリス昔話集(English Fairy Tales)』に収録されたバージョンです。この原典に記された3匹の子豚 あらすじと原作 結末は、まさに「本当は怖い童話」そのものの展開をたどります。
長男と次男は容赦なく捕食される|過酷なオープニング
物語の冒頭、貧しい母豚は3匹の子豚たちを養うことができなくなり、自活させるために世間へと送り出します。独り立ちした子豚たちは、それぞれ資材を運ぶ男に出会い、家づくりの材料を手に入れます。
1番目の子豚は怠け者で、すぐに作れる「藁(わら)」を選びました。そこへオオカミが現れ、「家の中に入れろ」と要求しますが、子豚が拒否すると、オオカミは一息で藁の家を吹き飛ばし、長男の子豚を一瞬で丸呑みにして食べてしまいます。逃げ出す猶予すら与えられません。
2番目の子豚は面倒くさがりで、手軽に手に入る「木(柴)」を選んで木の家を建てます。しかし同様にやってきたオオカミに家を吹き飛ばされ、次男の子豚もあえなくその場でバリバリと骨ごと貪り食われて絶命します。現代の絵本のように「弟の家へ走って逃げ込む」という救済措置は、原作には一切存在しないのです。
三男とオオカミの息詰まる頭脳戦|3つの心理トラップ
3番目の働き者の子豚は、手間と時間を惜しまず強固なレンガの家を建てました。オオカミはどれだけ息を吹き込んでもレンガの家を吹き飛ばすことができず、力づくでの攻略を諦めます。ここから原作は、子豚とオオカミによる高度な知恵比べへと突入します。
オオカミは三男を家の外へ誘い出して捕食しようと、3日連続で甘い罠を仕掛けます。「明日の朝6時にカブ畑へ行こう」「明日の朝5時にリンゴ園へ行こう」「明日の午後3時に町の市場へ行こう」と誘いかけるのです。しかし、知略に長けた三男は、オオカミが指定した時間の1時間前に現地へ向かい、オオカミが到着する前に目的を果たして悠々と帰宅します。
特に市場の帰り道、三男は購入したばかりの「バター撹拌器(木製の樽)」の中に身を隠し、坂道を転がり落ちることでオオカミを驚かせて撃退するという機転を見せます。オオカミの狡猾さを完全に上回る三男の知性が際立つ描写です。
大鍋で煮殺して平らげる|オオカミの衝撃的な末路
度重なる屈辱に激怒したオオカミは、最後の手段として屋根の煙突からレンガの家へ侵入を試みます。しかし、その企みを見抜いていた三男は、暖炉に並々と水を張った大鍋を置き、薪をくべて激しく沸騰させていました。
煙突から滑り降りてきたオオカミは、そのままグラグラと煮えたぎる熱湯の大鍋の中へと転落します。三男はすかさず鍋のフタを閉めて重石を乗せ、オオカミを完全に煮殺しました。そして原作の結末には、淡々とこう記されています。
「子豚はそのオオカミを夕食に煮込んで美味しく平らげ、それからはずっと幸せに暮らしました。」
捕食者が獲物によって調理され、胃袋へと収まるという食物連鎖の完全な逆転劇こそが、イギリス民話が伝承してきた本来のクライマックスなのです。