富士山の東側に位置する静岡県小山町須走地区。この地に鎮座する東口本宮冨士浅間神社は、平安時代初期の大同2年(807年)、あるいは延暦21年(802年)の富士山東山脚噴火の際、平城天皇の命により斎場を設けて鎮火祭を執り行ったことが起源と伝えられています。
神社の最大の特徴は、富士山の主要登山ルートの1つである須走口登山道の起点に位置している点です。富士講の信者や一般登山者は、登嶺に先立って当神社に参拝し、富士山の神霊の加護を祈るのが古来の習わしでした。「ここで参拝してから登ると過酷な須走ルートも無事に踏破できる」という信仰は今も根強く息づいており、夏山シーズンには国内外から多くの登山者が安全祈願に訪れます。
富士山世界遺産構成資産としての価値は、単なる歴史の古さだけではありません。社殿を囲む深い社叢(しゃそう)と、富士山の溶岩流が形成した特異な地形が一体となり、自然崇拝と神道が融合した厳格な空間が現在も守り継がれている点が高く評価されています。