風太くんが一世を風靡した最大の要因は、まるで人間のように背筋をピンと伸ばし、周囲を10秒以上も見渡す驚異的な「二足直立」でした。当時「中に人間が入っているのではないか」「サーカスのように芸を仕込んだのか」という声すら上がりましたが、立つ理由は完全にレッサーパンダ本来の生態と習性に基づく自然現象です。
野生のシセンレッサーパンダは、天敵(ユキヒョウや猛禽類など)の接近を察知するためや、周囲の地形・餌のありかを確認するために、後肢で立ち上がって周囲を見渡す「偵察行動」を行います。また、相手に対して体を大きく見せて威嚇する際にも立ち上がります。他の個体も一瞬立ち上がることは珍しくありません。
では、なぜ風太くんだけがあれほど美しく、長時間立ち続けることができたのでしょうか。当時の担当飼育員や動物学者の分析によると、以下の3つの要素が奇跡的に合致した結果だと結論づけられています。
第一に、骨格と筋肉のバランスが極めて優れていた点です。風太くんは生まれつきかかとの接地面積が広く、後肢の筋力と体幹バランスが抜群に安定していました。第二に、並外れた好奇心と警戒心の強さです。周囲の音や来園者の動き、飼育員が持つ餌箱の気配に人一倍敏感で、「もっと高い位置からよく見たい」という強い動機が直立時間を延ばしました。第三に、千葉市動物公園の展示場環境です。見通しの良い平坦な地面と適度な高さの柵が、風太くんにとって立ち上がって遠くを見るのに最適なロケーションとなっていました。