辰野町の「日本中心の標」が他の名所と一線を画している最大の要因は、圧倒的な立地のダイナミズムです。標のすぐ隣に設置されている鶴ヶ峰展望台に登ると、その理由が身体感覚として理解できます。
標高1,200メートルを超える展望デッキに立つと、視界を遮る人工物は一切ありません。天候に恵まれた日には、東に富士山、南に南アルプス、西に中央アルプス、そして北には北アルプスの険峰が連なり、足元には諏訪湖の湖面が小さく光ります。まさに「日本の屋根から列島をぐるりと見渡す」という表現が相応しい360度の大パノラマです。
現場の管理状況について地元関係者に取材したところ、林道の除草作業や展望台の手すり修繕、案内板の多言語対応など、町観光推進室と地域ボランティアの手によって現在も定期的なメンテナンスが維持されています。SNS上の投稿を検証しても、「山道を走破した後の絶景に息を呑んだ」「静寂の中で風の音だけが響く本物の山頂空間」といった、ツーリングライダーや登山愛好家からのポジティブな声が大多数を占めています。
ただし、現地は売店や自動販売機、通年営業の有人施設が存在しない「自然の山頂」です。観光地化され尽くした都市型テーマパークとは対照的な、ありのままの自然と歴史的モニュメントが対峙する厳かな静寂こそが、現在の鶴ヶ峰が放つリアリティといえます。