「なぜ、ただ置いてあるだけの消火器が危険なのか」という疑問に対する答えは、容器内部にかかる強烈な圧力とサビの相互作用にあります。放置された消火器が引き起こす消火器破裂事故の危険性は、火薬の爆発に匹敵する物理的エネルギーを秘めています。
破裂事故の主たる要因となるのは、古くから普及していた「加圧式消火器」です。加圧式消火器は、本体容器の中に炭酸ガスボンベ(加圧用ガス容器)が内蔵されており、レバーを強く握ることでボンベの封板が破れ、一気にガスが噴出して本体容器内を高圧(およそ1MPa以上)で満たします。この急激な圧力によって粉末薬剤を一気にノズルから噴射する仕組みです。
湿気の多い屋外、地面への直置き、雨水が吹き込むベランダなどに長期間放置された消火器は、底部や溶接部から赤サビが進行し、鋼板の強度が致命的に低下します。その脆弱化した状態でレバーが握られた瞬間、逃げ場を失った高圧ガスが薄くなった底部を粉砕。ロケットのように本体上部が吹き飛び、操作者の頭部や胸部を直撃します。総務省消防庁や業界団体の事故報告書には、屋外駐車場や児童公園で放置消火器を操作した一般市民や子どもが頭蓋骨骨折や即死に至った極めて痛ましい事例が幾件も記録されています。