「罰則がないなら受けないほうが得」と考えるのは極めて危険な短絡思考です。公権力による罰則こそありませんが、放置によって生じる「民事上・経済上のペナルティ」は、点検費用である1万〜2万円を遥かに上回る大打撃となってドライバーに跳ね返ってきます。
1. メーカー特別保証(5年・10万km)の無償修理が受けられなくなる
自動車メーカー各社は、新車購入時に「一般保証(3年または6万km)」およびエンジンやトランスミッション、ハイブリッド機構、EVバッテリーなどの基幹部位を対象とした「特別保証(5年または10万km)」を付帯しています。しかし、保証書の規約には「法令で定められた定期点検整備を実施し、定期点検整備記録簿(メンテナンスノート)に記載・保存されていること」という免責事項が例外なく盛り込まれています。
大手国産ディーラーのサービス責任者は現場のシビアな実情を次のように明かします。
「エンジン内部のオイルスラッジによるブローや、CVTの滑り、高額な電子制御ユニットの不具合が発生した際、まず確認するのがメンテナンスノートです。12ヶ月点検を連続してスキップしている車両は『適切な維持管理を怠った使用者責任』とみなされ、本来なら無償で交換できる50万〜80万円規模のアッセンブリー交換費用がすべて自己負担になるケースが実際に起きています」
2. ダイヤルステッカーの有効期限切れによる「50万円以下の罰金」
フロントガラスの助手席上部に貼られている円形の「ダイヤルステッカー(点検整備済みステッカー)」。ここに記された有効期限を過ぎたまま剥がさずに走行を続けると、道路運送車両法第109条違反により「50万円以下の罰金」が科される対象となります。
点検を受けないこと自体に罰則はありませんが、「期限切れのステッカーを貼り付けたまま放置すること」は明確な違法行為です。フロントガラスは保安基準によって貼り付け可能なシール類が厳格に制限されており、期限が切れたダイヤルステッカーは「視界を妨げる違法な貼り付け物」に該当してしまうためです。点検を受けないのであれば速やかに自らスクレーパー等で剥がさなければなりません。
3. 下取り・売却時の査定減額(10万〜20万円の価値下落)
中古車査定の業界統一基準(JAAI:日本自動車査定協会)においても、定期点検整備記録簿の記載履歴は決定的な評価軸です。過去の12ヶ月点検が整備工場のプロによって適正に行われてきた履歴(いわゆるワンオーナー・記録簿完備車)と、点検記録が途絶えている車両とでは、リセールバリューに10万円から場合によっては30万円以上の差が生じます。目先の点検代を浮かせたつもりが、売却時にそっくりそのまま損失となって相殺される構図です。