「玉ねぎを食べたあとのおならが異様に臭い」と感じるとき、腸内では一体何が起きているのでしょうか。その最大の要因は、玉ねぎのツンとした辛みや独特の香りの正体である「硫化アリル」をはじめとする含硫アミノ酸・硫黄化合物です。
通常、食事由来の栄養素の多くは小腸で消化・吸収されます。しかし、玉ねぎを一度に過剰摂取したり、胃腸の働きが低下していたりすると、分解しきれなかった硫黄化合物が大腸へと流れ込みます。大腸には数百種類、100兆個以上もの腸内細菌が存在していますが、ここで待ち構えているのがウェルシュ菌などの悪玉菌です。
悪玉菌がこの硫黄化合物をエサとして発酵・分解処理を行う際、副産物として発生するのが「硫化水素」や「メチルメルカプタン」と呼ばれるガスです。温泉街特有の「腐った卵の臭い」の主成分として知られる硫化水素は、ごく微量であっても人間の嗅覚に強烈な不快感を与えます。つまり、玉ねぎを食べたあとの悪臭は、素材に含まれる硫黄分が悪玉菌の代謝によって有毒なガスへと姿を変えた結果なのです。
さらに、玉ねぎには「フルクタン」と呼ばれる短鎖炭水化物(水溶性食物繊維・オリゴ糖の一種)が野菜類の中でもトップクラスに多く含まれています。フルクタンは人間の消化酵素では分解できず、大腸に届いて細菌の発酵を受けるため、二酸化炭素やメタンガスを大量に生み出します。この「大量の無臭ガス」と「微量の強烈な硫黄ガス」が腸内で混ざり合うことで、量・臭いともに耐えがたいおならが形成されてしまいます。