周囲の期待に無理に応えようとして疲れ果てる人が後を絶たない。自分を後回しにする生き方が、果たして正解なのだろうか。答えは否だ。
心理学の世界において、単なる他者軽視としての「自己中心性」と、己の身体的・精神的健康を守るための「健全な自利意識」は明確に区別される。他者の権利を侵害してまで我が身を通す行動は反社会的と捉えられるが、自らのエネルギーを守るために適切なノーを突きつける態度は、心の防衛メカニズムそのものである。この境界線を見誤ると、人は自己否定の渦に飲み込まれてしまう。
行動心理の観点から見れば、人間のすべての選択には「自らのストレスを軽減したい」という利己的な動機が潜在している。利他に見える慈善活動であっても、その根底には共感による痛みの解消や社会的評価の獲得という心理的報酬が存在する。利己的であることは悪ではなく、生命が環境に適応するための極めて自然な反応に過ぎない。