ノリタケの森が誕生したのは、日本を代表する高級陶磁器メーカー・ノリタケカンパニーリミテドが創立100周年記念事業として名古屋市西区の本社敷地約3万4,000平方メートルを大規模整備した2001年10月5日に遡ります。かつては陶磁器愛好家や遠足の小学生が主たる来訪者層でしたが、その客層が劇的に拡張した転換点は、敷地の一部を活用して開業した「イオンモール Nagoya Noritake Garden」の誕生にあります。
特に話題を呼んだのが、商業ゾーンに出店した「TSUTAYA BOOKSTORE 則武新町」の吹き抜け空間にそびえる天井まで届く巨大本棚です。本棚と天井の鏡面反射が作り出す幾何学的な視覚効果は、瞬く間に全国屈指の「映えスポット」としてSNS上を席巻しました。
しかし、単なる一過性のブームで終わらなかったのは、同施設が持つ100年超の重層的な歴史基盤があったからに他なりません。本棚で撮影を楽しんだ若年層が、ふと屋外へ出ると視界いっぱいに広がるのは、1904年(明治37年)に建設された日本陶器合名会社の赤レンガ建築やそびえ立つ6本煙突のモニュメントです。「最新のファッショナブルな空間」と「近代化産業遺産の重み」という強烈なコントラストが、都市空間としての体験価値を爆発的に引き上げました。これこそが、往年の陶磁器ファンだけでなくZ世代からファミリー層までもが足を運ぶ構造的理由です。