着物はかつて、親から子へ、そして孫へと三代にわたって受け継がれるのが当たり前の文化資産でした。しかし、現代社会においてその知恵の伝承が断絶しかけた最大の要因は、「手入れやたたみ方のハードルの高さ」によって生じる心理的なストレスにあります。「たたむのが難しそうだから袖を通すのをためらう」「シワになるのが怖いから箪笥の奥にしまい込んでしまう」という思考は、着物本来の豊かさを遠ざけてしまいます。
羽織だたみは、一見複雑に見えるかもしれませんが、本質は「衿を外側に折り、マチを内側に収める」というたった2つの動作に集約されます。洋服のジャケットを脱いだ際に肩線を整えてハンガーにかけるのと同等の、ごく論理的でシンプルな物理の法則に従っているに過ぎません。
長羽折・羽織と向き合うべき人の判断基準
手持ちの和装を健やかに保つために、自身のライフスタイルと照らし合わせた明確な判断基準を持つことが有益です。
【向いている人・積極的に取り入れるべき人】
・脱いだ後に「平らに広げて陰干しする10分間」を愛着の時間として楽しめる人
・リユース着物店などで手に入れた希少な羽裏(はうら)の芸術性を大切にしたい人
・たとう紙の交換(年に一度)や季節ごとの風通しを習慣化できる人
【慎重になるべき人・手入れの簡素化を考慮すべき人】
・脱いだ衣服をその日のうちに平らに広げるスペースや心理的余裕が極度にない人
・湿度管理ができない湿ったクローゼットにポリ袋のまま放り込んでしまいがちな人
・※このような場合は、無理に正絹のアンティーク羽織を抱え込まず、自宅の洗濯機で丸洗い可能かつシワになりにくい「東レシルック等の高機能ポリエステル羽織」から入るのが賢明な選択肢となります。