ネット上に氾濫する無料の文例集を鵜呑みにすることで生じる最大のトラブルが、「頭語(とうご)」と「結語(けつご)」の組み合わせミスです。手紙の最初と最後は、扉を開けて閉める行為と同じであり、対になる言葉が厳格に定められています。
ビジネス文書で最も一般的なのは「拝啓」に対して「敬具」を結ぶ形式です。より格式の高い手紙(社長就任の挨拶状、重要な取引先への陳謝やお礼)では、「謹啓(きんけい)」に対して「敬白(けいはく)」または「謹言(きんげん)」を用います。
しかし、ネット上の不正確な情報を誤認し、「拝啓」で始めたにもかかわらず結びを「かしこ」(女性用の私信専用)にしてしまったり、「前略」で始めた手紙に時候の挨拶を延々と書き連ねたりする初歩的な誤謬が頻発しています。「前略」は「前置きの挨拶を省略します」という意味であるため、時候の挨拶を省いて直ちに用件に入るのが鉄則です。夏の改まったビジネスレターにおいて「前略」を用いること自体が、礼を欠く行為と受け取られます。