中谷美紀の人生の大きな転換点となったのが、世界最高峰のオーケストラであるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者、ティロ・フェヒナー氏との結婚でした。ふたりの出会いは2016年10月、サントリーホールで開催されたクラシック音楽の祭典での共演がきっかけでした。
当時、小澤征爾氏が指揮を務めた公演に関わっていたふたりは、その後の金沢公演の夜、金沢市内の飲食店で偶然相席になったことで言葉を交わします。英語での語らいを通じて、芸術への真摯な姿勢や自然を愛する価値観が深く共鳴し、国境を越えた交際へと発展。2018年11月に晴れて婚姻関係を結びました。
彼女が生活の半分をオーストリアへと移した理由は、単なる「国際結婚に伴う転居」にとどまりません。20代から30代にかけて、映画『嫌われ松子の一生』やドラマ『JIN-仁-』など、過酷な撮影現場で心身を極限まで削りながら表現と向き合ってきた彼女にとって、東京の目まぐるしい消費社会から距離を置くことは、表現者としての魂を回復させるための切実な防衛策でもありました。1年のうち約半分をオーストリアで過ごし、残りの半分を日本で集中して撮影に充てるデュアルライフは、彼女が自ら勝ち取ったウェルビーイングの形です。