インターネット上の掲示板やSNSで毎年のように投稿されるのが、「会社から『お盆休みは夏季休暇だから、各自の有給休暇から3日分引いておく』と言われた。これは違法ではないのか?」という怒りの声です。
この問題の核心には、「有給休暇の計画的付与(計画年休)」という制度が存在します。労働基準法第39条第6項に基づき、労働者の代表と企業の間で有効な「労使協定」を締結している場合に限り、従業員が保有する年次有給休暇のうち「5日を超える部分」について、企業側が取得日をあらかじめ指定できる仕組みです。
たとえば、年間15日の有給休暇を持つ社員の場合、5日は本人が自由に取得できる枠として残さなければなりませんが、残りの10日については、労使協定に基づき「8月13日〜15日を全社一斉の夏季休暇とする」と定めて消化させることが法律上認められています。
しかし、ここには企業側が見落としがちな重大な法令違反の罠が二つ潜んでいます。
第一に、「労使協定を結ばずに会社が勝手に有給休暇を振り替える行為は違法」である点です。就業規則に書かれているだけでは不十分であり、事業場の過半数労働組合(または過半数代表者)との書面による書面協定が必須となります。これがないまま有休を減らす措置は、労働基準法第39条違反となり、労働基準監督署の指導対象となります。
第二に、「入社半年未満で有給休暇が付与されていない新入社員や中途採用者への対応」です。まだ有休を持たない社員に対して、全社一斉休業だからといって無給で休ませると、労働基準法第26条の「会社都合による休業」に該当し、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません。もし特別有給休暇を別途付与せずに欠勤控除を行えば、完全な法令違反となります。ネット上で「夏季休暇を勝手に削られた」と炎上する事例の多くは、こうした法的手続きの瑕疵に起因しているのです。