映画『孤狼の血』は、作家・柚月裕子氏による同名警察小説シリーズ(『孤狼の血』『凶犬の眼』『暴虎の牙』)を実写化したものですが、映画版には独自の脚色と驚くべき背景が存在します。
まず本作の舞台設定やヤクザ組織の構図には、昭和に実在した「広島抗争(呉抗争)」の実話モデルが色濃く反映されています。映画『仁義なき戦い』のオマージュを随所に散りばめつつ、かつて広島で実際に起きた警察と暴力団の泥沼の戦いを、現代的なサスペンス描写へと昇華させました。
そして最大のポイントは、第2作『孤狼の血 LEVEL2』が原作小説『凶犬の眼』をそのまま映画化せず、完全な映画オリジナルストーリーとして制作された点です。白石和彌監督と脚本の一ノ瀬けい子氏は、映画ならではのエンターテインメント性を極限まで高めるため、原作には登場しない最凶の怪物「上林成浩」を生み出し、日岡との宿命の直接対決を描き切りました。
小説版が日岡の内面的な成長と警察小説としてのサスペンスを重厚に描いているのに対し、映画版は生々しいバイオレンスと役者たちの感情の爆発を前面に押し出した、映画だからこそ到達できた傑作となっています。