花言葉の世界には、助けを求める声を上げることすら諦めたような、深い孤独や絶望を宿す花も存在します。これらは文学やアートのモチーフとしても頻繁に登場します。
荒野の過酷な風土に咲くエリカ(Heath / Heather)には、「孤独」「寂しさ」「裏切り」という哀愁を帯びた花言葉がつけられています。エミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』の舞台となったイングランド北部の荒涼としたヒース(荒野)に群生する姿が、誰の助けも届かない隔絶された孤独感を強く想起させたためです。
また、春先に赤や紫の鮮やかな花弁を開くアネモネ(Anemone)には、「見捨てられた」「はかない恋」「消える希望」という胸を締め付ける意味が眠っています。ギリシャ神話において、女神アフロディテに愛されながらも命を落とした美青年アドニスの流した血から咲いた花とされ、愛する者に置き去りにされた絶望と悲嘆の象徴となっています。
さらに、鮮烈な黄色で親しまれるマリーゴールド(Marigold)にも、その陽気な見た目とは裏腹に「絶望」「嫉妬」「悲嘆」という不穏な意味が含まれています。聖母マリアの祝日に捧げられた聖なる歴史を持つ一方で、黄色の色素が中世ヨーロッパで「裏切り(ユダの服の色)」と結びつけられたことが大きな理由です。